インドの減価償却費の計算方法とは?

インド進出を検討する日本企業にとって、投資回収(損益計算)時期・可能性を判断する際に重要となるのが減価償却費である。減価償却は、長期に渡って使用できる固定資産(設備・機械等)の取得にかかった費用を、その耐用年数の期間に応じて費用配分する方法だ。減価償却にかかる基本的な考え方はインドも日本と同じであるが、準拠する基準が異なるため細部においては差異が生じる。

今回は各基準の概要を中心にその計算方法を説明する。会計上は、インド会計基準(Accounting Standard - AS6)及びインド会社法(Companies Act, 2013)、税務上は、インド所得税法(Section 32, Income-tax Act, 1961 – 2015)、インド所得税規則(Income Tax Rule, 1962 New Appendix 1)を参照することとなる。つまり期中の通常の会計処理は会計上の減価償却のルールに則って処理され、法人税申告の計算の際に税務上の減価償却のルールにて調整を行い最終的な課税所得を計算するのである。


1. 会計上の減価償却

減価償却の基本的な考え方はインド会計基準において説明されている。また、減価償却方法としては、定額法(Straight Line Method - SLM)又は、定率法(Written Down Value Method - WDV)のいずれかを選択する。また、耐用年数に関しては、インド会社法(Companies Act, 2013)の別表II(Schedule II)にて規定されており、同法上は最低、会社法に基づいた減価償却費を計上することが義務付けられている。主要な固定資産の耐用年数は以下の通りである。

<耐用年数>

資産 耐用年数
工場建屋(Plant Factory) 30年
機械設備(Plant and Machinery) 15年
継続加工用の機械設備(Continuous Process Plant) 8年
一般什器備品(General Furniture and Fitting) 10年
車両(Motor cars) 8年
オフィス備品(Office Equipment) 5年
コンピューター(Computers) 3年

なお、上記固定資産の耐用年数は一般的なものを前提としており、業界毎に特殊な設備機械などに関しては個別の耐用年数が設定されているので、詳細は以下リンクよりCompanies Act 2013 Schedule IIを参照されたい。

 

上記耐用年数は交代なしの単一シフトを前提に作成されている。よって、交替制をとっている場合には割増の減価償却費が計上可能である。2交替制の場合は50%増し、3交替制の場合は100%増しとなる。但し、固定資産(設備・機械)の性質によっては割増の償却が認められないものもあり、そのようなものは別表上にNESD(No Extra Shift Depreciation)と記載がある。

 

また、原則として別表に基づいた耐用年数に基づいて減価償却費を計上するが、それと異なる(長い又は短い)耐用年数を採用することも可能である。その場合、財務諸表上で採用した耐用年数を開示することが義務付けられている。また、その耐用年数が合理的であることを裏付ける資料・証明書が必要となる。どのような資料・証明書を準備するかは事前に法定監査人と相談のうえ準備するとよい。

2. 税務上の減価償却

インド所得税法では、減価償却方法として定率法(Written Down Value Method - WDV)を採用しなければならないと定められている。また、償却は資産区分ごとの一つのブロック単位として計算するが、その際に参照する償却率はインド所得税細則の新別表I(New Appendix I)にて規定されている。

 

<資産区分と償却率>

以下主要な資産区分とその償却率の一覧である。

資産区分 償却率
工場建屋(Building) 10%
什器備品(Furniture and Fittings) 10%
機械設備(Machinery and Plant) 15%
車両(Motors cars) 15%
コンピューター(Computers) 40%
無形固定資産(Know-how, Patents, Copyrights, Trademarks, Licenses, Franchises or any other) 25%

なお上記以外の固定資産の償却率に関しては、以下リンクよりNew Appendix 1, Income Tax Rule, 1962を参照されたい。

 

また、税務上の減価償却費の計算方法として留意すべき点を、以下2点紹介する。

 

1点目は、税務年度(4月1日~3月31日)の期中取得資産の減価償却費の計算である。期中取得資産に関して、取得日から期末日までが180日以下の場合には償却額の50%までしか認められない。一方で期末日まで181日以上ある場合には1年分の減価償却費100%を計上可能である。使用期間に応じた按分などは行わない。

 

2点目は、加速償却(Additional Depreciation)の計算である。インド政府は製造業への新規投資促進の観点から、製造業向けの新規取得した設備機械に関して初年度20%の加速償却を認めている。尚、本加速償却に関しても前述の180日ルールの制限を受けるので年度末まで180日以下の場合にはそのうちの50%(つまり10%分の加速償却のみ)が認められ、残りの10%分の加速償却については次年度に繰り越すことができるとしている。

※2017年12月9日時点

 

税務上の減価償却に関しては、年度毎にインセンティブなどが設けられる場合もあるので、新規の設備投資の際には一度最新の状況を確認することをお薦めする。