インドの親子ローン・対外商業借入(External Commercial Borrowing - ECB)規制とは?

インドの親子ローン・対外商業借入(External Commercial Borrowing - ECB)規制とは?

東南アジア諸国で一般的な資金調達手段である親子ローンは、インドでも利用が可能である。しかしながら、外国為替管理法の適用が比較的厳しく残っているインドでは、その資金用途、貸主の要件、借入期間、上限利息などが細かく対外商業借入(External Commercial Borrowing - ECB)規制で規定されている。貸付の内容によって自動承認(Automatic route)と認可(Approval)ルートに分類され、承認が必要な場合にはインド準備銀行から事前に承認を取得する必要がある。当規制に関する監督・規制官庁はインド準備銀行となっており、各種届け出並びに借入後の返済・残高の報告が義務付けられている。以下制度の概要を示す。但し、説明については証券などの特殊な場合を除き一般的にインド進出企業に需要のある資金用途などに限り、制度全てについては説明を行わない。


1. 借入条件(自動承認ルート)一覧

借入金額や期間などに応じて、詳細な条件が設定されている。一番初めに確認が必要なのは、自身の企業が適格要件を満たしていることである。次に資金使途を確認し、最後に詳細な借入条件を確認していく。借主としての適格要件を満たしていない場合、資金用途が正しくても借入をおこすことができないため注意が必要である。以下、自動承認ルートが適用される借入条件の一覧となる。以下の条件に合致する場合には、自動承認で借り入れが可能である。一方で条件を満たさない場合には事前に公認銀行を通じて、インド準備銀行より認可を取得しなければならない。

  外貨建て中期借入
(最低平均償還期間3年又は5年)
外貨建て長期借入
(最低平均償還期間10年)
ルピー建て借入
(最低平均償還期間3年又は5年)
最低平均償還期間
  1. 借入額5千万米ドル以下の場合、3年間
  2. 借入額5千万米ドル超の場合、5年間
 金額問わず10年間
  1. 借入額5千万米ドル以下の場合、3年間
  2. 借入額5千万米ドル超の場合、5年間
適格借主
  1. 製造業・ソフトウェア開発企業
  2. 船舶・航空会社
  3. SEZ企業
  4. インフラ企業、NBFC(インフラファイナンス、アセットファイナンス)、持ち株会社、CIC(コアインベストメントカンパニー)
  1. 製造業・ソフトウェア開発企業
  2. 船舶・航空会社
  3. SEZ企業
  4. インフラ企業、NBFC(インフラファイナンス、アセットファイナンス)、持ち株会社、CIC(コアインベストメントカンパニー)
  5. REIT、INVIT
  1. 製造業・ソフトウェア開発企業
  2. 船舶・航空会社
  3. SEZ企業
  4. インフラ企業、NBFC(インフラファイナンス、アセットファイナンス)、持ち株会社、CIC(コアインベストメントカンパニー)
  5. REIT、INVIT
  6. その他全てのNBFC
  7. マイクロファイナンスに従事するNBFC、NGO
  8. その他サービスに従事する企業(R&D、研修、インフラサポート、物流)
  9. SEZ開発企業
認定貸主
  1. 国際銀行
  2. 国際資本取引所
  3. 多国籍金融機関(IFC、ADB等)、地方・政府金融機関
  4. 輸出クレジット機関
  5. 設備販売者
  6. 外国株主
  7. 外国長期投資家(年金基金、保険会社、政府系ファンド等)
  8. インド銀行の外国支店又は子会社
  1. 国際銀行
  2. 国際資本取引所
  3. 多国籍金融機関(IFC、ADB等)、地方・政府金融機関
  4. 輸出クレジット機関
  5. 設備販売者
  6. 外国株主
  7. 外国長期投資家(年金基金、保険会社、政府系ファンド等)
  1. 国際銀行
  2. 国際資本取引所
  3. 多国籍金融機関(IFC、ADB等)、地方・政府金融機関
  4. 輸出クレジット機関
  5. 設備販売者
  6. 外国株主
  7. 外国長期投資家(年金基金、保険会社、政府系ファンド等)
    ※一部例外あり
上限金利
  1. 最低平均償還期間3年以上5年未満:6カ月LIBOR+300bps
  2. 最低平均償還期間5年超:6カ月LIBOR+450bps
  3. 延滞利息の設定は設定金利から2%以内を上限とする。
  1. 6ヵ月LIBOR+500bps
  2. 延滞利息の設定は設定金利から2%以内を上限とする。
マーケット条件に準ずる。
資金使途
  1. 資本財の輸入(資本財の一部となるサービスの輸入、技術ノウハウ、ライセンス料を含む)
  2. 資本財のインド国内での購入
  3. 新規プロジェクト
  4. 既存設備の近代化・拡張
  5. 外国JV・子会社への再投資
  6. 政府系企業民営化の際の株式購入
  7. 既存の資本財輸入にかかる貿易金融の再融資
  8. 既に出荷されたもしくは輸入済み資本財の支払い
  9. 既存残存期間が短縮にならないECBの再融資
  10. 船舶・航空会社はその船舶・航空機の機体購入に限定される
  11. 一般の事業用途(運転資金含む)へのECBは最低平均償還期間を5年とする。

以下の目的を除く、全ての用途に使用可能

  1. 不動産事業
  2. 資本市場への投資
  3. インド国内企業への出資
  4. 転貸
  5. 土地取得

以下の目的を除く、全ての用途に使用可能

  1. 不動産事業
  2. 資本市場への投資
  3. インド国内企業への出資
  4. 転貸
  5. 土地取得

加えて、NBFCについては別個規定あり。

2. 親子ローン・対外商業借入実行までの流れ

上記条件に合致する内容で借入を行うという仮定のもと、一般的な借入実行までの流れをまとめておく。

  1. 借入条件の整理
    まずは借入条件の整理を行う。借入期間、金額、利率等である。利率は、上限金利が設定されているのでその金利以下であればいずれの金利を設定しても問題ないが、移転価格の観点からも他拠点で同様の親子ローンを組んでいる場合には、その利率と同等の利率を設定したり、もしくは事前に移転価格のベンチマーキングを行い適正な利率を把握しておくことが重要である。
  2. 借入契約書(Loan agreement)の作成・締結
    借入条件の整理が完了したら、その内容を契約書に落とし込む。特に最低平均償還期間などは既定の年数を上回っていないと、インド準備銀行から借入登録番号が取得できないため、提出先となる公認取引銀行(Authorized Dealer Bank - AD Bank)と相談・確認をしながら進めるとよい。契約書作成後は、当事者同士で署名を行い契約を締結する。
  3. 借入登録番号(Loan Registration Number)の取得
    契約書作成後、Form-83と呼ばれる借入の申請書式を準備し、インド地場銀行又は邦銀のインド支店を通じてインド準備銀行に借入登録番号を申請する。Form-83は契約署名日より7日以内に提出しなければならないため、借入契約書の作成と並行して進めることを推奨する。Form-83は勅許会計士又は会社秘書役の証明が必要となる。Form-83提出後、1週間~10日程度でインド準備銀行より借入登録番号が付与される。尚、申請者の情報(企業名、借入金額、借入期間)はインド準備銀行ホームページにて公開されるので留意する必要がある。
  4. 借入の実行
    借入登録番号取得後、借入資金の送金が可能となる。一般の銀行ルートを通じて送金を行う。
  5. 借入後のコンプライアンス
    借入実行後、毎月翌月7日までにECB-2と言われる書式で、インド準備銀行に対し借入資金の返済状況、残高の報告を行わなければならない。