インド物品・サービス税(Goods and Service Tax - GST)運用7つの基本理解

インド物品・サービス税(Goods and Service Tax - GST)運用7つの基本理解

2016年6月にインド政府はモデルGST法を発表し、導入に先駆け制度について述べています。本ページでは、モデルGST法案を元に概要から一歩踏み込んで今後運用に重要となるポイントをまとめました。まず概要についてお知りになりたい方は以下のページをご参照ください。また、本内容はモデル法案に基づいており、正式な法案可決後に一部内容につき修正が入る可能性があることを予めご了承ください。最新の情報につきましてはお問合せください。
=> インド物品・サービス税(Goods and Service Tax - GST)概要6つのポイント


1. 課税の概念

物品・サービス税(Goods and Service Tax - GST)は、消費地課税主義・仕向地課税主義の税金です。流通の初期段階の製造から最終消費者に至る各段階の取引で課税され、最終消費者が担税者となります。また、各事業者は仕入れにかかる税額は支払い税額から控除することができ、自らが付加した価値にのみ課税されます。GSTは、モノ・サービスの提供(消費)が行われる場所(Place of Supply)を管轄する税務当局に対して、モノ・サービスの提供を行った事業者が納税義務を負います。課税は、モノ・サービスの提供(Supply of Goods and/or Services )を対象として行われます。

 

よって、今後重要となるのは企業が行う活動が提供(Supply)とみなされるかどうか、みなされる場合いずれの地域が提供が行われる場所(Place of Supply)であるのかという点である。概念としては日本で運用されている消費税に類似したものとなり、現行の間接税よりも感覚的に理解しやすい税制となる。

2. 課税の仕組み

GSTは、SGST(State GST)、CGST(Central GST)、IGST(Integrated GST)の3種のGSTで構成されています。ここが大きく他国と異なる点で、税制の理解・運用を複雑にしている要因の一つです。インドでは連邦制を採用し、州政府にも徴税権や税法の立法権限が付与されています。よって、単一のGSTで運用することができず、州政府も含めて税制を運用する必要がありこのような複雑な構成になっています。各種取引と課税されるGSTの種別は以下の通りとなっている。

同一州内の在庫移動(Stock Transfer)はGSTの課税対象外だが、州を越えての在庫移動はGSTの課税対象となる。

取引内容 課税されるGSTの種別
同一州内取引 SGST及びCGST(定められた税率の50%ずつが割り当てられる)
他州との取引 IGST
輸入取引 IGST(IGSTに加え、基本関税も課せられる。)
輸出取引 0%が適用され仕入れの税額は還付対象となる

3. 提供とみなされる行為と例外

”モノ・サービスの提供(Supply of Goods and/or Services)”とみなされる行為の定義は広く、対価を伴う販売(Sale)、譲渡(Transfer)、物々交換(Barter)、交換(Exchange)、ライセンス(License)、賃貸(Rental)、リース(Lease)又は処分(Disposal)、サービスの輸入を含みます。

 

また、対価の伴わない取引についても5つ別途以下の通り規定されている。

  1. 恒久的な事業資産の移転・処分
  2. 一時的な事業資産の私的又は非事業用途の使用
  3. 役務の私的又は非事業用途での利用
  4. 資産の登録抹消後の保有
  5. 課税事業者による通常又は事業促進のためのモノ・サービスの提供

例外として、ジョブワーカーへの材料の支給は”モノの提供”とはみなされません。その他の内容は以下の通り。

項目 内容
譲渡
  1. 物品の所有権の移転は”モノの提供”とみなされる
  2. 所有権の移転を伴わない物品の譲渡、権利又は持ち分の譲渡は”サービスの提供”とみなされる
  3. 物品の所有権が将来移転する契約による、物品の譲渡は”モノの提供”とみなされる
土地・建物
  1.  土地のリース、賃貸契約、地役権契約、占有許諾は”サービスの提供”とみなされる
  2. 商業、工業又は住宅建物の一部又は物件すべてのリース、賃貸は”サービスの提供”とみなされる
処理・加工 自身が保有しない物品への処理・加工は”サービスの提供”とみなされる
事業資産の譲渡
  1. ある事業資産を保有する事業者が、当該資産を保有しない第三者の指示により当該資産を譲渡又は処分した場合には当該行為は”モノの提供”とみなされる
  2. ある事業資産を保有する事業者が、当該資産を私的又は非事業目的のために使用、使用可能にした場合対価の有無に関わらず”サービスの提供”とみなされる
  3. 課税事業者からの負債回収を目的として資産を処分する権利のある者が、ある資産を売却した場合、当該事業者の”モノの提供”とみなされる
  4. 事業目的として保有する資産は、当該事業者が課税事業者としての登録を抹消する場合保有する資産の譲渡とみなされる
その他”サービスの提供”とみなされる行為
  1. 不動産の賃貸
  2. バイヤーへの売却を目的とした複合施設、建物、土木工事の建築作業の全て又は一部

4. 仕入税額控除の仕組み

GSTにも仕入税額控除(Input Tax Credit - ITC)の仕組みが設けられています。しかし、前段でご紹介した通りGSTには、SGST、CGST、IGSTの3種類が存在しており、一部の取引で控除ができないので注意が必要です。具体的には、3種全ての仕入税額は、IGSTの支払税額から控除可能です。しかしながら、SGSTはCGSTの支払税額から控除できず、反対にCGSTもSGSTの支払税額から控除が不可能です。仕入に払った税と控除対象となる税の関係は以下の通り。

仕入の際に支払った税 IGST CGST SGST
 控除対象の支払税  IGST IGST IGST
  CGST CGST SGST
  SGST    

5. 物品の提供地とは?

冒頭にも触れましたがGSTは消費地課税主義・仕向地課税主義であるため、いずれの場所で消費又は提供されたのかというのが課税上重要なポイントとなります。また、それらの正しい認識は同じく取引が同一州内であるのか又は他州との取引に当たるのかを区分するのにも重要となる。物品の場合については、有形であるためいずれの場所が消費地であるのかを識別するのはそれほど困難ではない。

取引内容 提供地(Place of Supply)
物品の移動を伴う"モノの提供" 受領者への引き渡しのための物品の移動が完了する地点
第三者の指示による"モノの提供" 第三者の主たる事業拠点(本社など)
物品の移動を伴わない"モノの提供" 受領者への引き渡しが完了する地点
物品の組立・据付を伴う"モノの提供" 組立・据付場所
輸送中の船舶・航空機・鉄道・車両での"モノの提供" 荷積み場所

6. サービスの提供地とは?

前述の物品の提供と異なり、サービスは無形であるためその提供地を定義するのは物品よりも難しくなる。サービスの提供地に関する詳細は以下の通り。

取引内容 提供地(Place of Supply)
GST登録事業者に対する"サービスの提供"(後述の項目に該当するサービスを除く) 当該登録事業者の所在地
非GST登録事業者に対する"サービスの提供"(後述の項目に該当するサービスを除く)
  • 当該受益者の登録住所又は
  • サービス提供者の所在地
  1. 不動産関連サービス(建築士、デザイナー、エンジニア、不動産の使用許諾、建設など)
  2. 宿泊サービス(ホテルなど)
  3. 婚礼・宴会サービス
  4. 上記3項目に付随するサービス
当該不動産・船舶の所在地又は所在する予定の場所
レストラン、ケータリング、美容、フィットネス、美容整形サービスなど 実際のサービス提供場所
教育訓練、実績評価など
  • GST登録事業者に対するサービスはその所在地
  • 非GST登録事業者に対するサービスは実際のサービス提供場所
催事(教育、文化、科学、スポ―ツなど)・アミューズメント施設への入場サービスなど

催事の開催場所やアミューズメント施設の所在地

イベントの企画・運営サービス及びそれに関連するサービス
  • GST登録事業者に対するサービスはその所在地
  • 非GST登録事業者に対するサービスは実際のイベント開催場所
物品の輸送サービス(メール便、宅配も含む)
  • GST登録事業者に対するサービスはその所在地
  • 非GST登録事業者に対するサービスは輸送物品の引き渡し地点
乗客輸送サービス
  • GST登録事業者に対するサービスはその所在地
  • 非GST登録事業者に対するサービスは乗車・乗船地
船舶・航空機・自動車による輸送サービス

出発地

通信サービス
  • 固定回線の場合、その設置場所
  • 携帯・ネット通信の場合(後払い方式)、サービス受益者の登録住所
  • 携帯・ネット通信の場合(前払い方式)、代金の受領場所
銀行・その他の金融サービス サービス受益者の登録住所
保険サービス
  • GST登録事業者に対するサービスはその所在地
  • 非GST登録事業者に対するサービスは、当該受益者の登録住所

7. 提供の認識日

取引内容 基準日
 "モノの提供"(Supply of Goods)
  • 物品の移動を伴う"モノの提供"の場合:出荷日
  • 物品を出荷する必要がない"モノの提供"の場合、以下のいずれかの早い日
    1. 請求書発行日
    2. 当該物品に関する代金受領日
    3. 受領者の帳簿上で、物品の受領が計上された日
  • "モノの提供"が行われるか不明な時点で出荷された物品は、"モノの提供"が決定した日もしくは出荷から6カ月のいずれか早い日で認識する
継続的な"モノの提供"
  • 連続した請求(Successive Statement of Account)の完了日
  • 連続した請求がない場合、以下のいずれか早い日
    1. 請求書発行日
    2. 当該物品に関する代金受領日
"サービスの提供"(Supply of Services)
  • 既定の期日以内に請求書が発行された場合、以下のいずれか早い日
    1. 請求書発行日
    2. 代金受領日
  • 既定の期日以内に請求書が発行されなかった場合、以下のいずれか早い日
    1. 役務提供完了日
    2. 代金受領日
  • いずれにも該当しない場合、役務提供を帳簿に計上した日
継続的な"サービスの提供"
  • 契約上、支払義務が確定した支払日
  • 契約上、支払日が確定できない場合、以下のいずれか早い日
    1. 代金受領日
    2. 請求書発行日
  • 支払いが特定業務の履行と紐づいている場合、当該業務の完了日
リバースチャージ対象の取引(モノ・サービス) 以下のいずれか早い日
  1. 物品・役務受領日
  2. 支払完了日
  3. 請求書受領日
  4. 帳簿計上日