インド駐在・派遣に必要な12の準備

インド駐在・派遣に必要な12の準備

インドへ赴任する駐在者又は本社側で派遣の準備を進める関係者向けに、12のポイントに分けてその準備内容をまとめました。辞令が出てから赴任までは時間も限られていることから効率よく準備を進めたいと思います。皆さまのインド赴任がスムーズにスタートするようお役に立てれば幸いです。


1. 各種予防接種

在デリー日本大使館から以下の予防接種の渡航前の接種が推奨されている。渡航前に全ての接種が完了できなかった場合、インド国内でも国際的に流通するブランドのワクチンの接種が可能。ポリオについては、インドは2014年3月にWHOよりポリオ清浄国に認定されたため現地での感染リスクはないと考えられる。

  A型肝炎 B型肝炎 破傷風 日本脳炎 腸チフス 狂犬病 ポリオ※
インド赴任者 ×
インド出張者 ×

※在デリー日本大使館資料より作成

◎:接種を強く薦めるもの

○:接種が望ましいもの

△:目的地や滞在の形態により検討すべきもの

×:不要

2. 取締役としての登録(DSC・DINの取得)

現地法人もしくは合弁企業へ取締役として出向する場合、電子署名証書(DSC)並びに取締役識別番号(DIN)を取得し、新取締役として会社登記局(ROC)へ届け出る必要がある。DSCはその後も、各種税務申告書への署名添付などに利用される。DINは各個人ごとに取得が必要な番号で、一つの識別番号で複数の会社の取締役登録に利用することができる。よって、既に他のインド企業の取締役に就任している場合には既存のDSC並びにDINを活用しての登録が可能である。

DSC・DINを取得後、通常は取締役会を開催し当該赴任者を新取締役として選任し、取締役の決議書コピーをROCへ決議後30日以内に提出する。DSC・DINの詳しい取得方法・必要書類などは以下のページから確認が可能。
=> DSCの取得方法
=> DINの取得方法

3. 現地法人(事業体)との雇用契約・出向契約書の締結

インド赴任に際して現地法人との雇用関係を定める雇用契約書、現地法人と親会社の間で派遣に関する条件(主に費用負担の割合)を定める出向契約書を準備する。インド・日本の法人でどのように駐在コストを負担するかは、PE認定課税のリスクなどを鑑み設計していく必要がある。また、インドでは税務調査が駐在員個人、インド法人に対して入るケースも多々あり事前に税務当局の調査を想定した適切な契約書の作成が必須となる。

上記の書類に不備がある場合や、適切に備え置きされていない場合不必要な課税リスクを招くことから予防的な準備が重要である。

4. 雇用ビザの取得

以前は雇用ビザ取得に数カ月を要するケースも聞かれたが、最近は大分発給がスムーズになっていると聞いている。書類に不備がなければ3営業日程度で発給される。日本でのビザ申請は、IVS Global Japanという会社が委託を受けておりIVSを通じて申請を行う。ビザの申請手続きは、オンラインでの申請用紙の作成、東京・大阪のビザ申請センターへの提出という流れになっている。申請するセンターの地域での区分は以下の通りとなっている。自身の住民票がいずれの地域に属するかによって申請先が変わってくる。

<東京(大使館)管轄>

  1.     北海道
  2.     東北 (青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島)
  3.     関東 (茨城、埼玉、千葉、東京、神奈川、山梨、栃木、群馬)
  4.     信越 (新潟、長野、)
  5.     北陸 (富山、石川、福井)
  6.     東海 (岐阜、静岡、愛知)
  7.     沖縄
  8.     マーシャル諸島共和国

<大阪(領事館)管轄>

  1.     近畿 (滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山)
  2.     中国 (鳥取、島根、岡山、広島、山口)
  3.     四国 (徳島、香川、愛媛、高知)
  4.     九州 (福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島)
  5.     東海(三重)

必要書類等の詳細は、以下IVSのホームページを参照されたい。
=> IVS Global Japanホームページ

5. 日印社会保障協定に基づいた適用証明の取得

インドでは日本に類似した社会保障制度として、被用者年金(EPS:Employees' Pension Scheme)及び被用者積立基金(EPF:Employees' Provident Fund)が存在する。現地企業では、自発的に企業が加入している場合もしくは、従業員数が20名以上の拠点に強制適用されている。赴任先の企業が適用対象となっている場合、一時的にインドへ派遣される被保険者が、厚生年金保険の加入を継続し、インドの社会保障制度の加入の免除を受けようとするために適用証明(Coverage of Certificate - COC)を日本側の所轄年金事務所から取得し現地で適用免除の手続きを受ける必要がある。

詳細な手続きは、以下の日本年金機構のホームページを参照されたい。
=> 協定相手国別の注意事項(インド)
=> 日インド社会保障協定 申請書一覧(加入免除手続き)

6. 現地給与への切り替え日の確認

赴任後、雇用契約・出向契約の内容に基づき日本側給与・インド側給与の支払いを行うが、滞りなく給与が支払われるように事前に給与切り替え後の金額と切り替えタイミングを関係部署(財務部など)と確認を行っておくことが必要。

一般的にはインド側の口座開設は一通りの現地での赴任手続きが完了しないと行えず、赴任後1ヵ月以上かかる場合もある。ルピー建て給与の支払いまでは時間を要することからその間の生活費をどのように工面するかも決めておくとよい。

7. 留守宅管理の手配

留守宅が持ち家の場合、留守中賃貸に出されることがある。その場合、通常は管理会社を通じて第三者へ賃貸を行い定期的に家賃を管理会社が代理で受領し駐在員へ支払うことになる。賃貸収入には源泉徴収税が課せられるので、家賃収入から源泉徴収税を控除した額を振り込んでくれる。通常は控除額の明細は毎年発行してくれるので、それを元にインド側で所得の申告を行う。インド側では、通常の居住者となる3年目以降全世界での所得の開示・納税が必要となる。日本側で控除がされた源泉徴収税は、インド側でも日印租税条約に基づいて外国税額控除を受けることが可能。また、会社側と賃貸収入にかかる所得税を会社・個人のいずれが負担するかを事前に協議しておくことも重要(一般的なケースでは、給与にかかるインド側の所得税は会社が全額負担しているが、賃貸収入は個別の企業判断が存在する。)
=> インドでの申告の詳細はこちら

8. インドでのアパート探し

インド側での住居が確定していなくても、雇用ビザを取得し現地側へ赴任することは可能。また、雇用ビザで赴任した場合、到着後14日以内に外国人登録(FRRO)を行わなければならないが、こちらの登録もホテルなどの仮の住所で登録が可能である。ただ、赴任前にアパートが確定していると、赴任後速やかに業務を開始することが可能である。特に、家族帯同で赴任する場合には、住環境のみならず学校・病院へのアクセスや、買い物場所までのアクセスなど様々な確認事項があるため、現地事情に明るい駐在員がいない場合には日系の不動産エージェントに依頼するのも一つのオプションだ。

 

やはり建築水準は著しく日本と品質が異なるが、それでも日本人の求める水準に近い物件はそれなりの家賃がする。ただし、あまり品質が高い物件は多くないので、期待を高く持って物件を探すと見つからず膨大な時間を要してしまうので注意。ある程度日本人が多く住んでいるアパートを最高水準として、後はどこまでできるかがポイントとなる。

9. 転出届けの提出

現在住民票のある市区町村の自治体に、海外(インド)への転出届けを提出する必要がある。通常は転出予定の14日前から受付可能となっている。転出届けの手続きは自治体毎に異なるが一般的には身分証明書があれば手続きを完了できる。

 

誤って住民票を残していくと、実際には日本へ住んでいないのに住民税など不要なコストが発生するので注意が必要。

10. 常備薬の準備

持病などがあり継続的に服用しなければならない薬がある場合には、余裕を持って準備することをお薦めする。急な事情やトラブルででスケジュール変更せざるを得ない場合もあり、柔軟な対応が可能な量が必要。また、現地側では国際ブランドでの医薬品も流通しているが日本よりも有効成分量が多かったりするので注意が必要。以下、持参を検討すべき日常的に使用する可能性がある医薬品を記載しておく。参考までに日本の下痢止めはほとんど効果がなく、インドで下痢になった場合には現地の薬を試してみることをお薦する。

<例>

  • 解熱剤(バファリンなど)
  • 胃腸薬(とにかく油が多く胃もたれすることが多いため)
  • 目薬
  • 消毒薬
  • 日焼け止め
  • かゆみ止め(虫刺され)
  • うがい薬
  • 蚊よけスプレー(室内に散布するもの。雨季の必須アイテム)
  • 熱さまシート
  • ばんそうこう
  • サプリメント など

11. 日本食の買い出し

赴任後、現地の食事が合わないことや疲れて日本食が食べたくなることもある。現在はインドの各都市で日本食レストランも増えつつあり、外食で日本食に困ることも少なくなったが、簡単に食べられる日本のインスタント食品を持って行くことをお薦めする。ちなみにインド人に人気が高いのはヨクモクのシガールと柿の種。特に柿の種は卵が入っていないのでベジタリアンでも食べることができ、かつ安いののでお土産としてはコストパフォーマンスが高い。

 

レトルトのカレーや牛丼とごはんがあればレンジでごはんが作れるし、フリーズドライの食品は重量も軽く持ち込みやすい。また、現地側で日本のような繊細な味のお菓子がないため、クッキーや和菓子のようかんやどら焼きは心のオアシスになる。

12. 送別会の開催

出発の準備が整ったら、後は送別会を開催してもらい仲間へ赴任の別れを告げる。赴任後、特に重要になる人間関係が本社側での現地ビジネスのカウンターパートや管理部門との関係。色々と本社側で報告の窓口となったり、営業・契約手続き・会計経理をサポートしてもらうことが多く、マンパワーの不足しがちなインド会社で、どれだけ本社のサポートを引き出せるかが赴任成功のカギと言っても過言ではない。

 

現地側の事情は思うように本社に伝わらないことも多く、駐在員の間ではOKY(お前がきてやってみろ)という単語がささやかれるほどである。インド側のありえない事情を少しでも理解してもらえるよう本社側の人間関係を大切にしたい。