インドの支店・現地法人比較7つのポイント

インドの支店・現地法人比較7つのポイント

支店と現地法人は、いずれも営業活動が可能な事業体として比較されることの多い事業形態です。いずれの形態で進出をするか決定を行う際に影響のある7つのポイントについてそれぞれ支店・現地法人の比較を行いました。インド政府は"Ease of Doing Business in India"というスローガンで、ビジネス環境改善に力を入れておりますがこれはインドへの直接投資促進という意味になります。つまり、ここ数年法人税の減税やコンプライアンス負荷の軽減などが図られていますが、これらの恩恵を主に受けられるのは現地法人です。駐在員事務所や支店といった、いわば一時的な事業拠点についてはむしろ報告義務の増加など運用がしづらい面も出てきています。


1. 活動範囲

現地法人は最も活動の制約が少ない進出形態の一つです。一方で支店は、設立に際してインド準備銀行(RBI)の認可を取得しての設立という性質上、活動が認可を受けた範囲に限定されます。支店で認められている活動範囲は以下の通りです。


<支店で認められた活動範囲>

  1. 物品の輸出入
  2. 専門家・コンサルティングサービス
  3. 親会社の事業に関連した研究
  4. 親会社・グループ会社とインド企業の技術・財務提携の斡旋
  5. 親会社を代表し、インドで購買・販売代理店としての活動
  6. インドにおけるITサービス提供並びにソフトウェア開発
  7. 親会社・グループ会社の販売した製品に対する技術サポート
  8. 航空会社・船会社

よって、支店形態では製造行為は認められておらず、製造を行う場合には必ず現地法人を設立する必要があります。また、取引に際して必ず販売又は購入先のいずれかが外国企業となる必要があり、インド国内で調達した物品の国内での再販売も禁止されています。
※但し、SEZへ支店を設立する場合にはこの限りではありません。=>
インドの特別経済区(Special Economic Zone-SEZ)についてはこちら

 

また、支店の開設はRBIから認可を取得した地域内で可能で、開設後移動することも可能ですが、認可を取得した以外の地域へ支店を移動・または新規に開設する場合には新たにRBIの認可を取得する必要があります。全ての支店を統括する本店機能を有する支店が、Nodal Officeと呼ばれます。支店の開設数については原則4拠点(東西南北)としていますが、それ以上開設する場合にはその理由を当局へ説明する必要があります。

 

現地法人の活動範囲は、定款で定めるところとなる。しかしながら、設立の際に外国投資直接投資規制(FDIポリシー)に則り投資を行う必要があり、外国資本企業が禁止しされている業種や一部出資規制がある業種が存在します。製造業や商社業務などについては、100%外国資本で行うことが可能です。
=> インドの外資規制についてはこちら

2. 設立要件

支店設立に際しては、以下の収益実績並びに純資産の2つの要件を満たす必要があります。

  • 親会社が直近5期連続黒字であること
  • 純資産USD100,000以上

万が一上記要件を満たすことができない場合、RBIからの認可が下りる可能性が低くなりますが、申請すること自体は可能で当局へ個別の説明により設立が許可される場合があります。

 

現地法人については、前述の外資規制の要件を満たす限り設立に特別の要件はありませんが、設立に必要な以下の情報等を準備する必要があります。

  • 設立取締役 2名(うち1名はインド居住取締役)
  • 発起人(設立株主)

3. 責任範囲

支店は、その活動について親会社が保証を行い無限の責任を負います。現地法人については、株主(親会社)がその出資金額を上限とし責任を負います。支店での活動範囲は限定されており、雇う従業員数も限られていることから、大きな事故などがない限り大きな問題となるケースは少ないと考えられます。

 

一方で現地法人の活動は非常に広範で、雇う従業員も製造や大型のプロジェクトになると非常に大人数となる場合、それに応じて事業リスクも大きくなります。製造会社の場合、労働問題などに直面するケースも少なくなくその場合各製造拠点ごとに法人を分けるということも考えられます。但し、法人数を増やした場合、管理が煩雑になりコストが増大するデメリットがあります。

4. 設立プロセス・期間

支店設立認可を管轄するのは、インド準備銀行(RBI)です。申請企業は、公認取引銀行(Authorized Dealer Bank - AD Bank)を通じて申請書類を提出します。AD Bankは支店開設後も、RBIへの全ての書類提出・情報の窓口として機能します。日本企業の場合、通常自社の進出する地域の日系メガバンクの支店を通じて申請を行います。設立までに要する期間は、書類準備も含めおおよそ4~6カ月程度の期間を要します。認可取得に必要な期間は個別の企業ごとに異なります。また、ごく一部の申請については何なかの理由により財務省(Ministry of Finance)へ申請案件が参照されるケースがあります。その場合、理由は明らかにされませんが何らかの理由で申請企業の活動に政府側で確認・調査が必要な事項があり、通常プロセスとは異なる調査が行わるため更に時間を要します。

 

会社設立は会社登記局(Registrar Of Company - ROC)が管轄しています。現在申請は電子化されており、以前と比較すると設立完了までにかかる時間は短縮されている。当局での書類処理にかかる時間は1ヵ月程度で、その他の書類準備の期間を入れても2~3ヵ月程度で設立が完了します。
=> インド会社設立の流れについてはこちら

5. コンプライアンス負荷・維持コスト

支店固有のコンプライアンスとして、年次活動証明(Annual Activity Certificate - AAC)の取得・報告、警察署長(Director General of Police - DGP)への報告が挙げられます。AACは、毎年会計監査人が法定監査の際に発行する年次の活動証明です。近年、テロ防止や資金の不正利用防止などを目的として駐在員事務所・支店の報告義務が強化されており、広範な情報の提出が求められるので注意が必要です。DGPへ報告義務のある内容は、以下の通りとなっています。

  • 親会社の詳細
  • インド人従業員の詳細
  • 外国人駐在員の詳細(氏名、パスポート番号、ビザ詳細等)
  • 外国人出張者の詳細(氏名、訪問期間、目的等) など

現地法人固有のコンプライアンスとしては、インド会社法に基づいた企業統治が挙げられます。定期的な取締役会・株主総会の招集、CSR活動など多岐に渡ります。

 

法人所得税は以下の通り、現地法人の方が低い税率となっており、インド政府の直接投資を促進したい姿勢が見て取れます。また、現地法人の中でも特に新規設立の製造会社については優遇措置が取られています。

区分 課税所得1000万ルピー以下 課税所得1000万超1億ルピー以下 課税所得 1億ルピー超
総売上げが5000万ルピーを超えない内国法人 29.87% 31.96% 34.61%
新規設立の国内製造会社 25.75% 27.55% 28.84%
その他内国法人 30.90% 33.06% 34.61%
外国法人(支店など) 41.20% 42.02% 43.26%

6. 利益の還流

支店活動から生じた利益は、前述の法人所得税が課せられた後本社へ送金可能です。送金に際しては、監査済み財務諸表や種々の証明書を提出する必要があります。

 

一方で現地法人が利益を還流する場合には配当という形式をとり、15%(その他に3%の教育目的税有り)の配当分配税(Dividend Distribution Tax - DDT)が課せられます。配当分配税は配当企業負担で、受け取り企業側は非課税となります。

7. 撤退方法

支店と現地法人は、設立手続きが異なったように閉鎖手続きも異なります。現地法人は撤退・清算した場合、その責任を負う事業体そのものが消失するため閉鎖を許可する当局も慎重になる傾向があります。支店閉鎖に際しては、会社登記局(ROC)、所得税局(Income Tax Office - ITO)から異議なし証明書(No Objection Certificate - NOC)を取得し、最後にRBIの送金許可を取得し口座残金を送金し閉鎖します。

一方で現地法人の清算は裁判所の許認可事項となります。支店の閉鎖手続きの場合、早くて1年程度で完了しますが現地法人の場合、裁判所の認可取得も含め最低でも2~3年を要する手続きとなります。また、既に支店を持つ企業が支店を閉鎖して現地法人を設立する場合には、支店が現地法人へ転換されるわけではなく支店の閉鎖と新規の現地法人設立という手続きを並行して進めることになります。